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1-2-1-1ゾーンプレスとは?
1-2-1-1ゾーンプレス(フルコートプレス)は、最も激しいフルコートディフェンスの1つです。前線からボールマンにプレッシャーをかけ、コーナーに追い出して積極的にダブルチームを仕掛けることで、相手のターンオーバーを誘発するディフェンスです。
1-2-1-1ゾーンプレスを成功させるためには、ディフェンス能力に長けた俊敏な選手が必要です。また、オフェンスからディフェンスへの切り替えが早くできなければ、相手にイージーショットを決められるだけになってしまうので注意が必要でしょう。
また、1-2-1-1ゾーンプレスは同じ形から様々なディフェンスを展開することができるので、敵味方の能力に応じて使い分けることも可能です。以下では1-2-1-1ゾーンプレスをわかりやすくまとめているので、参考にしてもらえればと思います。
1-2-1-1ゾーンプレスの目標
可能な限りコーナー寄りにスローインさせ、オフェンスがボールをキャッチした後すぐに2人でダブルチームを仕掛けます。
これが1-2-1-1ゾーンプレスにおける主なトラップであり、ボールマンに苦し紛れのパス、特にディフェンスの手の上を超えるロブパス(山なりのパス)をさせることができれば第1段階は成功となります。山なりのパスを残りのディフェンスでスティールをし、そのままアーリーオフェンスの形に繋げるのが目標となります。
上記が主な目標ですが、1-2-1-1ゾーンプレスではその他にも仕掛けるポイントはたくさんあります。練習方法などと一緒に、1つずつポイントを見ていきましょう。
1-2-1-1ゾーンプレスのメリット
- ゴールに近いところでターンオーバーを誘発する
- 試合の流れをスピードアップする
- ガードの手からボールを離させる
- リカバリーするための時間が多い
- プレイ時間をシェアできる
- 相手を疲労させる
ベースライン付近(コーナー)でトラップを仕掛けるため、スティールをした場合にゴールに非常に近く、ディフェンスにとって守りずらい状況になります。ゴール付近でスティールできることほど理想的なことはないでしょう!
ゾーンプレスを仕掛けるのであれば、あなたのチームはアップテンポの試合に強くなければならないです。逆に言えば、ハーフコートオフェンスが強力なチームにとっては、ゾーンプレスによって無理やりアップテンポの試合にさせることは好ましくないです。試合のリズムが遅いと感じた時は、ゾーンプレスでリズムを早めることができます。
相手チームの優れたガードがボールを運んでゲームを組み立てるのを防ぎ、優れたガード以外の選手にボールを運ばさせることができます。相手のゲームプランやリズムを崩すことができる上、ハンドリング技術の低い選手のところでプレスを仕掛けることでターンオーバーを増やすことができます。
ベースライン付近でプレッシャーをかけているため、プレスを突破された後にリカバリーする時間があるのもメリットの1つです。
1-2-1-1ゾーンプレスは体力をかなり消耗するため、選手を頻繁に交代する必要があります。ベンチプレイヤーが試合に出られる時間が長くなり、チーム全体の士気が上がるというメリットもあります。
ゾーンプレスを仕掛けるのであれば、自チームの選手のスタミナが十分であるか、控え選手が十分なはずです。ゾーンプレスによって相手のスタミナを削ることができます。
1-2-1-1ゾーンプレスのデメリット
- アグレッシブなプレスによる失点の高いリスク
- スター選手頼みのチームには向いていない
- 長い練習時間が必要
前線から積極的にプレッシャーをかける1-2-1-1ゾーンプレスは、プレスを突破された際にアウトナンバーができやすいというデメリットがあります。1-2-1-1ゾーンプレスを使うのであれば、アウトナンバーからの失点を覚悟しておく必要があります。
メリットのところでも説明しましたが、1-2-1-1ゾーンプレスは体力を使うため、チーム全員が参加する必要があります。1人か2人のスター選手に頼っているチームの場合、彼らの体力も削ってしまい、オフェンスが回らなくなるというデメリットがあります。交代することのできない選手がいるのであれば、その選手のポジションを、体力をあまり使わない最終ラインにするなどの工夫が必要です。
1-2-1-1ゾーンプレスは一朝一夕で身につけられるものではありません。複数の分解練習を経て、実践的な練習、試合で繰り返し使うことで徐々に身についていくものです。1-2-1-1ゾーンプレスを習得するために他の練習に使えた時間を失っている(機会損失)ということを忘れないようにしましょう。
ルール:基本事項の確認
- サイドライン側へのドライブ突破はNG
- ダイヤモンドの真ん中(1-2-1の真ん中)へのパスは必ず防ぐ
- ハンズアップ
1-2-1-1ゾーンプレスは中央に手厚いディフェンスである反面、サイドライン側をドライブで突破されてしまうとプレスが一切機能しなくなります。セカンドラインのディフェンスは、ミドル側へオフェンスを誘導するようにスタンスを構えましょう。
オフェンスは、真ん中へフラッシュをしてボールを中継しようとしてくるのが一般的なボール運びです。ダイヤモンドの真ん中にパスが入ってしまうと、プレスがかけられないだけではなく、アウトナンバーを作られてしまう可能性が非常に高くなります。フラッシュに対してはバンプをするなど、真ん中へのパスは絶対にさせないようにしましょう。
1-2-1-1ゾーンプレスでプレッシャーをかけている時に、最もやられてはいけないのが頭の上を超える「速いパス」です(オーバーヘッドパス)。ボールマンから山なりのパスが出なければ、スティールできる確率はかなり下がってしまいます。さらに、ディフェンスの頭の上を越えて速いパスが出た場合、ディフェンス全体が遅れてしまい、失点に繋がる可能性は高くなります。山なりのパスやバウンドパスをさせることで、ディフェンスが戻る時間を作ることが大切です。
ポジション別の役割と適した人材
まず、各ポジションの名称をファーストライン、セカンドライン、インターセプター、セーフティと呼ぶことにします。またボールがあるサイドをストロングサイド、ないサイドをウィークサイド、エンドラインからボールをパスするオフェンスをインバウンダーと呼ぶことにします。これらは説明をスムーズに行うための便宜上のものであり、正式な名称ではありませんのでご了承ください。
ファーストラインの役割
- あらかじめチームで決めておいたサイドにパスを出させる
- ボールがインバウンドされると同時に、セカンドラインのディフェンスと一緒にプレスをかける
片方のサイドを遮るようにディフェンスをすることで、他の4人のディフェンスが簡単になります。また、パスが出る方向が分かっているため、素早くダブルチームを仕掛けることができます。プレスの間を抜かれることが多いので、真横からプレスに行くのではなく、ゴールを守るようにプレスをかけると良いです。
ファーストラインは素早い動きが要求されるとともに、可能な限り身長が高い選手が向いています。というのも、インバウンダー(ボールを出す人)にプレッシャーをかける際に、身長が低いとロングパスを簡単に通されてしまうからです。
セカンドラインの役割
- ボールを入れさせたくないサイドはディナイをする。パスが入ると同時に、コート中央に移動し、スティールを狙う。オープンディナイをすることで、パスが出た後にスティールを狙うまでの動作が速くなる。
- 逆サイドは、ボールが入ると同時にファーストラインのディフェンスと一緒にプレッシャーをかける。サイドライン側を抜かれないように、ミドルに誘導するスタンスを取る
プレッシャーをしっかりとかければ、インバウンダーへのリターンパスが多くなり、また精度の低いパスが多くなります。スティールの狙い目はそのリターンパスであり、ゴール下付近でスティールできるので得点に繋がる可能性が非常に高いです。
また、1-2-1-1ゾーンプレスの特徴として、中央にディフェンスが厚い反面、サイドへのディフェンスが薄いです。サイドライン沿いへのドライブ突破をされてはいけません。
インターセプターの役割
- 苦し紛れのパスをスティールする
- ファースト、セカンドラインがドリブルで突破された時に、ボールマンを止める
インターセプターは、コート上で最もバスケIQが高い選手が向いているポジションです。自分の身体能力を考慮した上で、パスを出させてスティールすることが要求されます。オフェンスに近過ぎればパスはこない上に、他のオフェンスがノーマークになってしまいます。また、スティールに飛び出して失敗した場合、セーフティしか残っていないため失点に繋がる可能性が高いです。コート上のバランスを考え、プレス全体をコントロールする力が要求されます。
また、セカンドラインがドリブル突破されてきた場合は、ボールマンを止めるか、状況によってはファールをして速攻での失点を防ぐという役割も担っています。
セーフティの役割
- ロングパスをスティールする、またはロングパスを投げさせない
- 2対1の状況で時間をかけさせる、または止める
オフェンスは下図のエリアにロングパスを狙うことが多いです。
セーフティはロングパスのスティール狙うだけでなく、投げさせないということも重要な役割です。インターセプターはパスを誘ってスティールすることも大切ですが、セーフティは基本的にパスを誘う動きをしてはいけません。これはセーフティが最終ラインであり、スティールに失敗した場合確実に失点に繋がるためです。
また、1-2-1-1ゾーンプレスでは2対1の状況になることが多く、2対1を止めるのが得意な選手が向いています。
1-2-1-1ゾーンプレスの手順
インバウンドパス
1-2-1-1においては、コーナーへパスをさせること自体が1つの目標となります。ファーストラインはインバウンダーに対してプレッシャーを与え、ロングパスを簡単にさせないようにします。また、両方のコーナーへパスを許すのではなく、チーム内で決めたサイドの方へパスを誘導するようにディフェンスすることがポイントです。
セカンドラインの2人は、パスをさせないと決めているサイドに対してはディナイを厳しく行い、もう1つのサイドではパスをわざと入れさせます。もちろん、パスをさせないと決めていたサイドにパスが入ってしまった場合も問題はありません。
インバウンドパスにおいては、以下2つのルールを守るように徹底しましょう。
- 青1はジャンプをしない
- 青4と青5はロングパスを出させないようにディフェンスの距離を調整する
インバウンドパスに対してジャンプをしてしまうと、その分だけダブルリームに行くのが遅くなります。1-2-1-1ゾーンプレスの目的はコーナーへパスを出させ、そこでダブルチームを仕掛けることなので、目的を誤らないようにしましょう。
ロングパスを出されてしまうと、ゾーンプレスが全く機能しません。青4と青5はロングパスを出させないようにしましょう。
1つ目のトラップ
1つ目のトラップを仕掛ける際には、下記の2つがあります。
- 即座にダブルチーム
- ドリブルをついたらダブルチーム
インバウンダーからコーナーへパスが入ったら、セカンドラインとファーストラインで即座にプレスを仕掛けます。1-2-1-1においてはこのダブルチームがほぼ全てと言っても過言ではないくらいに大切です。ハンズアップをしてパスを出させないようにした上で、ボールマンをつぶしていきます。
コーナーでボールをもらったオフェンスがドリブルをつくまでファーストラインはダブルチームに行きません。原則として、他のプレイヤーへがパスを出させないようにディフェンスを行い、ドリブルを突かせます。ドリブルを突くのと同時に、2人でダブルチームを仕掛けます。
即座にダブルチームに行くのが一般的な1-2-1-1のゾーンプレスです。ドリブルを突いてからダブルチームに行く場合、難易度が高くなるため、バスケIQの高さが要求されます。
コーナーへパスが入ったら、青1と青2でダブルチームを仕掛けます。ドリブルでフェイントをかけるスペースを与えないことが大切です。理想を言えば、ボールマンにゴールを背にした状態でパスを受けさせることです。パスのコースを限定することができるので、スティールを狙いやすくなります。
以下、その他のプレイヤーの動きです。(図の番号を参照)
- 青3はコート中央に移動し、プレスの真ん中にパスが入るのを防ぐ
- 青4はボールマンから出てくるパスをスティールするために、オフェンスの位置に合わせて移動する
- 青5はオフェンスの前線へのロングパスをスティールするためにポジションを移動する
赤1がサイドライン側へドリブルを仕掛けた場合、青2は必ず正面に入ってドリブルを止めます。青1は横についていきダブルチームを継続し、タイミングを見計らってプレッシャーを強めます。
ボールがインバウンダーへ戻った時の対応
1つ目のトラップが正しく機能した場合、オフェンスがパスをできるのはインバウンダー(赤2)のみになります。インバウンダーにパスが戻ること自体は、ディフェンスにとって悪いことではありません。なぜなら、ボールをゴールから遠ざけており、オフェンスに時間を使わせることに成功しているからです。
インバウンダーへパスが戻った際の対応は、
- 青3は(ウィークサイドのディフェンス)はパスのスティールを狙う。スティールができないと判断した場合、インバウンダーへプレッシャーをかける振りをして、赤3へのディフェンスに戻る。インバウンダーの動作を遅れさせ、青1が戻る時間を稼ぐ役割も担う
- 青1はインバウンダーの「正面」にすぐに戻る。
- 青2、4、5はマンツーマンディフェンスを意識し、それぞれのオフェンスをディナイするか、パスをさせない距離で守る
インバウンダーが長身プレイヤーでドリブルが苦手なことがよくあります。そのような場合は、インバウンダーにボールが戻った際に、マンツーマンディフェンスのように守ることもできます。青1以外のディフェンスは積極的にディナイをして、インバウンダーにドリブルを突かせ、ターンオーバーを誘います。
また、インバウンダーから再びコーナーへパスが出た場合(最初のパスよりも前進しているはず)、同じようにダブルチームを仕掛けます。青1は豊富な運動量を要求され、体力的な負担が大きいです。ローテーションでポジションを回すか、適宜選手を交代する必要があるでしょう。
2つ目のトラップ
セカンドラインを超えてパスが出てしまった場合に仕掛けるのが2つ目のトラップです。セカンドラインを超えるパスなので時間がかかり、その間にディフェンスはトラップの準備をすることができます。
青4はボールマン(赤4)の正面に入り、サイドライン側へドリブルをさせないようにディフェンスをします。青2は全速力で戻り、ダブルチームを仕掛けます。ダブルチームを仕掛ける際は、守るゴールを背にするようにします。
青1と青3はハリーバックし、パスカットに備えます。オフェンスの位置により戻るべきポジションが変わってしまうため、高いバスケIQが要求されます。
1つ目のトラップと同様に、ボールを戻される分には問題ありません。1-2-1-1ゾーンプレスは積極的にスティールを狙うディフェンスですが、オフェンスに時間をかけさせた場合でも、十分成功と言えます。
ゾーンプレスをやめるタイミングとは?
ゾーンプレスの説明をしていて質問が多いのが、ゾーンプレスをやめるタイミングです。1-2-1-1ゾーンプレスに関しては、下記の2つがあると思います。
- オフェンスがフロントコートに入った時
- 1-2-1-1のダイヤモンドの真ん中にパスが入った時
または、インターセプターが継続不可能と判断した際には、全体に声をかけてゾーンプレスを終了しても良いでしょう。監督が指示を出すのは簡単に思えますが、コート外からの声が選手全員に聞こえないということは頻繁に起こります。監督が指示を出すのではなく、コート上の選手が状況を判断する方が望ましいでしょう。
ハーフコートディフェンスへのつなぎ方
1-2-1-1ゾーンプレスは前線で積極的にプレッシャーをかけているため、突破された後にディフェンスを立て直すのが難しいです。まずはハリーバックを徹底して、オフェンスの速攻を防ぐことが大切です。1-2-1-1からマンツーマンに移行することはほとんど不可能に近いので、ゾーンディフェンスが一般的な選択となりますが、2-2-1ゾーンプレスなどと違い、移行しやすい形というものはありません。2-3ゾーンディフェンスか2-1-2ゾーンディフェンスに移行するのが最も無難でしょう。
また、もしマンツーマンディフェンスを選択する場合であっても、人を捕まえるのではなく、エリアに戻ってから人を捕まえるという意識を持つことが大切です。
まとめ
1-2-1-1ゾーンプレスは型にはまれば強力な武器となりますが、諸刃の剣という側面もあります。ゾーンプレスを突破する練習を十分に積んでいるチームに対しては、速攻でのイージーショットでの失点を増やすだけの可能性が高いため、相手を見極めて使うことも大切です。
また、1試合を通してゾーンプレスを仕掛けるのではなく、要所要所で仕掛けるといいでしょう。試合の流れを引き寄せたい時、フリースローの後などに仕掛けるといいです。チェンジングディフェンスを検討してみるといいでしょう。
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1-2-2の場合には青4、青5の動きは1-2-1-1の動きとは全く別の動きになるのでしょうか?また、1-2-2の場合には青1-3の動きも全く別の動きになるのでしょうか?よろしくお願いします。
コージさん
ご質問ありがとうございます!
オールコートプレスに関しては、個人的な見解ですが、1-2-2という形はほとんど使われていません。というのも、1-2-2ですと真ん中にスペースがあり、フラッシュなどでボールを簡単につながれてしまうためです。
オールコートプレスを考えるのであれば、1-2-1-1、2-2-1、1-3-1あたりだと思います。
ご質問に答えていないような形になってしまいますが、1-2-2ゾーンプレスというものは基本的にしないという認識を持っていただければと思います。
ちなみに、ハーフコートでの1-2-2ゾーンディフェンスというものは、3-2ゾーンディフェンスとほとんど同じ考え方でできますので、よければ参考にしてください。
ありがとうございます。確かに1-2-2だと真ん中にスペースが出来てしまいますね。ゾーンプレスは、対応能力があるチームに関しては、非常にリスクが高いシステムなので研究が必要です。コメントありがとうございました。いつも参考にさせて頂いております。非常にためになります。