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2-3ゾーンディフェンスとは?
2-3ゾーンディフェンスはバスケの中で最も一般的なゾーンディフェンスであり、ゾーンといえば2-3が頭に浮かぶ人も多いのではないでしょうか?
また、2-3ゾーンディフェンスと2-1-2ゾーンディフェンスは非常に似た性質を持っています。
マンツーマンディフェンスが1人1人のオフェンスにマッチアップするのに対して、ゾーンディフェンスでは担当の「エリア」を守ります。ゾーンというとマンツーマンよりも楽だと考えてしまう人もいるかもしれませんが、強いゾーンをするためにはマンツーマンと同じくらいの運動量が必要になります。ゾーンであってもディフェンスに休憩する時間はないのです。
さて、2-3ゾーンディフェンスではトップに2人、ブロック周辺に2人、ペイントエリア内に1人のポジショニングをします。説明を簡単にするために、トップ2人のことをガード、ブロック周辺の2人のことをフォワード、ペイントエリア内の1人のことをセンターと呼びます。(正式な名称ではありません)
2-3ゾーンディフェンスのメリット/強み
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- ペイントエリア内のディフェンスが強い
2-3ゾーンディフェンスはバスケットボールにおいて最もペイント内に厚いディフェンスです。センターがペイントエリアから外に出ないことにより、オフェンスをゴールから遠ざけることができます。1on1で止められない長身プレイヤーが相手にいる場合に有効なディフェンスです。
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- ファールトラブルを防ぐことができる
攻める主軸選手が決まっている相手チームに対して、マンツーマンディフェンスの場合はその選手のマークをする味方がファールトラブルになってしまいがちですが、5人のコンビネーションで守るためファールトラブルになりにくいです。
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- エースプレイヤーを止めることができる
1on1では守れない相手チームのエースを、2-3ゾーンとして組織的に機能することで守ることができます。特に、相手チームの得点源がインサイドである場合に2-3ゾーンの効果を発揮します。
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- 速攻の形に繋げやすい
他のゾーンディフェンスと同様に、あらかじめ選手のいる位置が決まっているため、練習通りの速攻を出しやすいです。また、ポイントガードやシューティングガードが先頭にいるので速攻の形を作りやすいです。
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- 攻め慣れていないチームが多い
ゾーンオフェンスの練習をするチームは少ないです。また、練習をしているチームであっても、マンツーマンに対する練習に比べれば、ゾーンオフェンスは微々たるものです。つまり、ゾーンディフェンスをするということ自体が、相手に取ってのデメリット(自チームのメリット)になるのです。
2-3ゾーンディフェンスのデメリット/弱み
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- アウトサイドシュートが得意なチームに弱い
2-3ゾーンディフェンスはインサイドを徹底的に守るスタイルである反面、アウトサイドはどうしてもノーマークができてしまいます。シューターがいないまたは1人しかいないチームに対しては有効ですが、複数のプレイヤーがアウトサイドシュートを得意とするチームに対しては2-3ゾーンディフェンスは機能せずに崩壊します。
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- リバウンドが取りにくい
全てのゾーンディフェンスに当てはまるデメリットですが、ディフェンスリバウンドを取りにくいです。これはマッチアップをしていないため、ボックスアウトができず、オフェンスに飛び込みリバウンドをされてしまうからです。
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- オフェンスにマッチアップを選ばれる
マンツーマンとは異なり、マッチアップをオフェンスが決められるようになります。例えば、相手のエースプレイヤーが味方の最もディフェンスが下手なプレイヤーの所で攻めてくるという感じです。
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- スキルアップのための時間を削られる(機会損失)
様々な記事で何度も言及していますが、チームの勝利よりも個人のスキルアップを優先すべきというのが私の意見です。2-3ゾーンディフェンスは一朝一夕でできるようなディフェンスではなく、練習のかなりの時間を取る必要があります。
2-3ゾーンディフェンスのルール
2-3ゾーンの詳しい守り方に入る前に、常に頭に入れておいて欲しい5つのルールを共有したいと思います。練習中、試合中でも常にこの5つのルールを意識するようにしてください。
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- 5人全員がハンズアップ
ゾーンディフェンスで最もやられてはいけないのが、オフェンスに自由にボールを回されることです。ハンズアップ(手をあげる)をして、オフェンスのパスコースを制限しましょう。
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- ギャンブルしない
組織で守るディフェンスのため、1人でもかけてしまうと失点に繋がります。ギャンブルでスティールを狙ってはいけません。
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- 5人全員でリバウンド
デメリットの部分でも説明しましたが、リバウンドは2-3ゾーンの弱みです。オフェンスリバウンドを許さないためにも、5人全員でリバウンドを取りに行きましょう。
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- 5人全員がバンプ
バンプは2-3ゾーンディフェンスをする上で欠かすことのできないものです。特にハイポストフラッシュに対しては、必ずバンプをするようにしましょう。ローポストからのハイポストフラッシュだけでなく、逆サイドのウィングからハイポストへフラッシュするオフェンスも多いので、ポジションに関わらず5人全員がバンプする必要が有ります。
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- コミュニケーション
ボールに誰がチェックに行くのか、自分の守るエリアから違うエリアに行ったオフェンスの受け渡しをしているか、ハイポストフラッシュをセンターに伝えているか、これらは全てコミュニケーションです。ゾーンを成功させるためには常に5人全員がコミュニケーションする意思を示しましょう。
ボールポジション別の守り方
さて、ここまで2-3ゾーンディフェンスの概要やメリット・デメリットなどを話してきましたが、いよいよ守り方を説明していきます。2-3ゾーンディフェンスはボールのある位置ごとに守り方を考えるのがわかりやすいです。オフェンスが攻めるポイントとして狙ってくる位置 = 守る位置となります。
*説明をわかりやすくするために、2-3の上2人を「ガード」、下3人の真ん中以外を「フォワード」、真ん中を「センター」と呼ぶことにします。
トップ・オブ・ザ・キー
トップにボールがある場合、2-3ゾーンは最も基本的な形をとり、ガードはエルボーの先のスリーポイント付近、フォワードはブロックから1歩程度外に出た所、センターはフリースローラインとゴールの中間に位置します。
この状態でオフェンスにやられてはいけないことは、ハイポスト(エルボー含む)にパスを入れられることと、ドリブルペネトレイトで中央を突破されることです。
その代わりに、ウィングかコーナーにパスがいくように誘導する必要があります。
ポイントガードがシュートも得意で、フリーにしておけない場合、2人のうち1人がチェックし、もう1人がハイポストのディナイを担当します。ポイントガードをチェックする場合、担当しているサイドへパスを出させないようにスタンスを斜めに構えます。
また、ポイントガードに対してチェックに行っているサイドのフォワード(青3)は、ウィングにパスが出た場合にクローズアウトをできるように少しだけ上に動いておきます。
ウィング
図で示しているのがウィングにボールがある際に基本的なディフェンスのポジション取りです。
ボールチェックをする青2は、シュートを打たせずにドライブをさせることが目的です。また、ディフェンスのスタンスに関しては、ウィークサイドに誘導するのか、ストロングサイド(ミドルサイド)に誘導するのかはコーチの好みによります。基本的にはウィークサイドへ誘導させるようにスタンスを取るのがいいでしょう。
青1はハイポストのディナイ、ハイポストにオフェンスがいなければトップにいるガードのケアをします。
青3は逆サイドへのスキップパスを警戒し、可能であればスティールをしてもいいでしょう。
青4はショートコーナーにポジションを取り、ローポストにオフェンスがいる場合は必ず前側にポジションを取ります。コーナーにオフェンスがいる場合はキャッチ&シュートをされない距離(選手の能力によって距離は変わる)に位置します。
青5はローポストを守りつつ、ハイポストの方にも気を配ります。
オフェンスの人数の多いサイドのガードが、ポイントガードにチェックに行ってしまった場合の対応
下の図のような状態は頻繁に起こります。本来オフェンスが少ないサイドのディフェンスがポイントガードのチェックにいくべきなのですが、ガードがコート全体の状況を把握しきれず、図のような状態になってしまいます。
この場合、同サイドのウィング(赤3)にパスを出され、ハイポストのオフェンス(赤5)がボールサイドに移動してしまうと数的不利になってしまいます。対策として、フォワードがチェックに行く振りをして、ガードが戻って来る時間を稼ぎます。動き方に関しては図を参考にしてください。
また、2-3ゾーンの特徴として、ガードの2人で3ポジション(トップと両ウィング)の3ヶ所を守っているため、オフェンスがノーマークになってしまうことが頻繁にあります。ガードのディフェンスが十分に戻ってくる時間を稼ぐためにも、フォワードが上図と同じ動きをして時間を稼ぐ必要があります。状況によってはフォワードがそのままウィングに付いてしまってもいいでしょう。
コーナー
図で示しているのがコーナーにボールがある際に基本的なディフェンスのポジション取りです。
青4がコーナーのチェックをします。
ウィングにボールがあるときと変わっているのは、青5がローポストの前側にポジションをとるということです。後ろ側には青3がいるので、ロブパスが出されることはなく、ローポストに簡単にパスを入れさせないように前側にポジションを取ることが大切です。
また、青2はウィングにパスを返させないようにディナイをするのか、コーナーからのドライブorパスを守るためにインサイドよりにいるのかも決めておきます。基準としては、青4が1on1に強く、ドライブで抜かれる心配がないのであればディナイをした方が得策です。また、コーナーでボールを持っているオフェンスがハンドリングに長けていない場合、ディナイをしてミスを誘います。あるいは、相手チームのセンター陣が強く、インサイドを徹底して守りたいのであればディナイではなくインサイドを固めます。
ハイポスト(エルボー)
2-3ゾーンでオフェンスに得点されやすいのがハイポストからプレイです。ハイポストにパスが入るのは徹底的に避けたいですが、試合を通してはどうしてもパスが入ってしまうこともあります。
パスがハイポストに入ってしまったら、青5がボールにマッチアップします。ハイポストからはジャンプシュート、ドライブ、ハイローなどのパスと選択肢が多くディフェンスするのは簡単ではありません。青5の能力上全てを守るのが難しい場合、ジャンプシュートを捨ててドライブとハイローを防ぐように守るのがいいでしょう。
また、ハイポストにボールが入った後にオフェンスが真っ先に狙うのはハイロープレイです。青3と青4は近くのオフェンスをつかまえ、ローポストで面を取られないようにディフェンスします。同時に、コーナーへのシュートチェックも守備範囲になりますので、オフェンスの位置に合わせて状況判断していきます。
青1と青2はウィングとトップに意識を向けつつ、ドライブに対するスティールを狙います。イメージとしては横からちょっかいを出すことで、ハイポストからドライブさせないようにします。
ハイポストにボールが入ってしまったら、とにかくボールを外に出させること、外にボールが出たらノーマークでシュートを打たせないようにシュートチェックをすることを意識しましょう。
ローポスト/ショートコーナー
2-3ゾーンでは基本的にローポストやショートコーナーにパスが入るということはありません。ウィングやコーナーにボールがある場合、ディフェンスは必ず前側にポジションを取るのがルールだからです。
一番やってはいけないのが、オフェンスが同じサイドのハイポストとローポスト(下図)にポジショニングを取っている際に、コーナー(ウィング)からローポストにボールを入れられてしまうことです。
ローポストにパスが入ると、ハイポストのオフェンスがゴールに向かってダイブをしてノーマークのレイアップを打たれてしまいます。ハイポストに対してはガードが上側からディナイしているので、ローポスト側からのパスを防ぐ手段はありません。ローポストやショートコーナーへは原則としてパスを入れさせないようにしましょう。
また、パスが入ってしまった場合は積極的にトラップ(ダブルチーム)を仕掛けるのもいいでしょう。ダブルチームの仕掛け方に関しては、この記事の後半の方で説明しています。
トラップディフェンス(ダブルチーム)を仕掛ける
2-3ゾーンディフェンスにおいてトラップを仕掛けるのは、コーナーかローポスト/ショートコーナーにボールがあるときです。それぞれの場所におけるダブルチームの仕掛け方を見ておきましょう。
コーナーへのダブルチーム
2-3ゾーンディフェンスで最も一般的なトラップがコーナーへ仕掛けるものです。オフェンスはパスをする選択肢が少なく、山なりのロングパスになりがちなのでスティールを狙いやすいです。具体的な手順は下記になります。
- ウィングからコーナーへパスが出た際に、ウィングに付いていたガードはそのままコーナーへ向かってフォワードと一緒にダブルチームを仕掛けます。ハンズアップをしてパスを出しにくくさせておくことが大切。
- 逆サイドのガードはボールサイドのウィングまで走り、ウィングにパスが戻らないようにディナイをします。または、パスをさせるスペースをわざと作り、スティールを狙います。
- センターは必ずローポストの前側にポジションをとります
- 逆サイドのフォワードが残りの2人のオフェンスを見ます。2人のどちらにパスが出ても対応できる距離にポジションをとることが大切。また、ハイポストへの飛び込みに対しては必ずバンプをし、アウトサイドのオフェンスよりも優先して対応します。
オフェンスのポジショニングによっては、アウトサイドのスキップパスに対するスティールをあきらめて、インサイドを固める必要があります。
コーナーへダブルチームを仕掛けることのメリットはスティールできるということだけでなく、一度スティールができるとオフェンスはコーナーへパスを出しにくくなり、オフェンスのオプションを少なくさせることができます。
ローポスト/ショートコーナーへのダブルチーム
先ほども説明しましたが、2-3ゾーンはローポストとショートコーナーにボールを入れさせてはいけません。万が一パスが入ってしまった場合、「必ず」ダブルチームを仕掛け、ボールをアウトサイドに返させます。
- ボールがローポスト/ショートコーナーに入ったら、センターとボールサイドのフォワードでダブルチームを仕掛けます。
- 逆サイドのフォワードはペイントエリア内を守り、オフェンスの位置に合わせて自分の位置を変えます。ハイポストからローポストまで幅広く守る必要があるので高い判断力が求められます。
- ボールサイドのガードはウィングへディナイします。
- 逆サイドのガードが残りの2人を守ります。このダブルチームの目的はスティールではなく、ボールをアウトサイドへ返させることです。ガード陣は無理にディナイなどをする必要はなく、インサイドを固めてもいいでしょう。
スキップパスの対応
ウィング to ウィング
ウィングにボールがある場合、ガードはボールチェックとハイポストのディナイをしているので、スキップパスに対してすぐに対応をすることはできません。
図のようにボールサイドのフォワードが時間を稼ぐ必要があります。また、ボールサイドのショートコーナーやコーナーにオフェンスがいないのであれば、ガードに受け渡しをするのではなく、そのままボールマンに付いてしまってもいいでしょう。
ウィング to コーナー
フォワードがしっかりとクローズアウトをする必要があります。スキップパスからドライブをされてゾーンディフェンスが崩れることは多々あり、スキップパスからのドライブは絶対に抜かれてはいけません。特にベースライン側にドライブをされるのはNGです。ベースライン側からクローズアウトをするようにしましょう。
コーナー to ウィング
ウィングからコーナーへのスキップパスは苦し紛れのパスであることが多いです。スティールができればワンマン速攻になってレイアップが打てるので、ガードは積極的にスティールを狙いましょう。
リバウンドの考え方
エリアを守っているゾーンディフェンスは、ボックスアウトが容易にできずにオフェンスに飛び込まれる危険性が高く、マンツーマンディフェンスよりも圧倒的にリバウンドが取りにくいです。
上背のあるセンターとフォワードがいるのであれば、ガードはリバウンドに参加せずに速攻のために走り出しても良いという考え方もありますが、基本的に5人全員でリバウンドに参加すべきでしょう。というのも、2-3ゾーンに対してはアウトサイドのシュートが多くなり、必然的に遠くにはねるリバウンドが増え、ガード陣のエリアにリバウンドが飛んでくることが多いからです。
また、2-3ゾーンはボックスアウトをしにくいというだけで、ボックスアウトをしなくていいというわけではありません。特にインサイドの3人は必ず近くのオフェンスに対してボックスアウトをします。オフェンスにボックスアウトをされて内側でオフェンスリバウンドを取られてしまうと、そのままゴール下で得点されてしまうので注意が必要です。
基本的な考え方は、
- 5人全員でリバウンドに参加する
- 各エリア内にいるオフェンスを捕まえてボックスアウトをする
さらに詳しいことは下記ページで紹介していますので、参考にしてください。
>>ゾーンディフェンスにおけるディフェンスリバウンドを考える
速攻への繋ぎ方
インサイドの3人がリバウンドを取った場合
ガードのうち1人がアウトレットパスを受けとるか、自らリバウンドを取った味方に近づいてボールをもらいます。パスを受けたらコート中央へドリブルでボールを運び、もう1人のガードと逆サイドのフォワードの3人で3線速攻の形を作ります。逆サイドのフォワードは距離があってきついですが、ダッシュをすることでアウトナンバーを作れる可能性が高くなります。
ガードがリバウンドを取った場合
自らドリブルで中央を駆け上がります。ガードが高い位置でリバウンドを取った場合、2対1や1対1の状況ができていることが多いので、迷わずに得点を狙いに行きましょう。
コート中央をドリブル駆け上がるのが理想的ですが(シュートやパスの選択肢が多い)、状況次第ではサイドラインよりでも問題ありません。また、ドリブルに固執することなく、パスで前線に繋ぐ意識も持ちましょう。
さらに詳しいことは下記ページで紹介していますので、参考にしてください。
>>ゾーンディフェンスからファーストブレイクに繋げる動き方
まとめ
インサイドに強い2-3ゾーンディフェンスは、初めてゾーンディフェンスに挑戦するというチームやコーチにとってはやり方が確立されているので挑戦しやすいでしょう。インサイドが弱く1on1では守れない場合や、相手チームのエースがインサイドを中心に得点を重ねる選手である場合に高い成果を上げるディフェンスです。
ここまでで紹介したメリット、デメリット、守り方などを吟味した上で、チームに導入するかどうかを検討してみてください。