*説明を分かりやすくするために、2-2-1の一番前の2人のことをファーストライン、その次の2人のことをセカンドライン、最後の1人をセーフティーと呼ぶことにします。
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2-2-1ゾーンプレスの概要
1-2-1-1ゾーンプレスが積極的にダブルチームを仕掛けるプレスであるのに対して、2-2-1ゾーンプレスは相手に時間を使わせることが最大の目的です。
もちろん、ダブルチームやパスカットを狙うこともできないわけではないですが、相手に時間を使わせた上で、ハーフコートにしっかりと戻ってディフェンスをするためのシステムであることを念頭に置いておきましょう。
2-2-1ゾーンプレスのメリット
2-2-1ゾーンプレスのメリットは主に2つあります。
- 相手の攻撃時間を減らせる
- 不必要な失点を防げる
前線からじわじわとプレッシャーをかけて、相手に時間を使わせることで、ハーフコートオフェンスにかけられる時間が減ります。
他のゾーンプレスなどと異なり、プレスを突破された後にアウトナンバーができたり、ノーマークのレイアップで失点をすることが少ないということです。
2-2-1ゾーンプレスのデメリット
デメリットも主に2つあります。
- 習得に時間がかかる
- 試合終盤には不向き
一般的なディフェンスシステムと比べた場合、2-2-1ゾーンプレスを習得するためには時間がかかります。個人のスキルアップなどに使える時間が減ってしまうということがデメリットです。
積極的にスティールを狙えるシステムではないため、試合終盤の時間がないときには使いにくいということです。
2-2-1ゾーンプレスを成功させる4つのポイント
- ボールマンへのマッチアップ – マンツーマンとの違いを理解する
- 2-2の真ん中の穴を埋める/弱点であるということを理解する
- ダイヤモンドを保つ
- 最終ラインは不用意に飛び出さない
ボールマンに対するディフェンスは、ハンズアップしてボクサーステップを踏みます。マンツーマンディフェンスでは腰を落としてドライブに対して守るのに対し、オールコートプレスではドライブさせることが目的であり、パスをされてはいけません。特に頭上を越えるロングパスをされてはいけません。
2-2-1ゾーンプレスの最大の弱点は2-2の真ん中です。大抵のオフェンスはセカンドラインの背後から真ん中に向かってフラッシュをすることでオフェンスを展開していくことが予想できます。これに対しディフェンスは、フラッシュをさせない(バンプする)、真ん中を絞るなどで対応します。真ん中にパスが簡単に通るようでは、2-2-1ゾーンプレスの意味は全く無くなってしまいます。
ファーストラインとセカンドラインの4人は、常にダイヤモンドを保つことを意識します。オフェンスの位置に合わせてディフェンスの立ち位置を調整する必要がありますが、まず基本としてダイヤモンドの形を保つことを大切にしましょう。
2-2-1ゾーンプレスの目的はスティールを狙うことではなく、オフェンスに時間を使わせることです。そして、最もやってはいけないのが、オフェンスにノーマークでレイアップをさせることです。それを防ぐためにも、最終ラインのディフェンスは基本的にはスティールに行かないという心構えを持つことが大切です。ロングパスのスティールを狙うというよりも、ロングパスを出させないようなポジショニングをすることが重要になります。
紐の距離とは?
ゾーンプレスの考え方として、紐の距離というものがあります。これは、選手間に紐が結ばれていると考え、選手間で一定の距離を保つようにするというものです。例えば、ファーストラインの選手の紐の距離をエルボーとエルボーの距離と考え、常にその距離を保つように2人で連携して動くという感じです。
この考え方には一理あり、練習の初期段階においては選手の距離感を保つことで練習をスムーズに進めることができます。しかし、私は試合においては有効でないと考えています。というのも、ディフェンス同士の距離は、オフェンスの立ち位置やディフェンスの能力によって変わるべきものであり、絶対の正解というものは存在しないと考えているからです。
選手1人1人が自分の立ち位置を判断して動けるようになることが何よりも大切でしょう。
余談が長くなってしまいましたが、2-2-1ゾーンプレスの動き方と練習メニューを紹介していきます。
分解練習から全体練習までを一貫して行うことで、練習効率はグンと高くなるでしょう。
ポジション/状況別動きの手順
・インバウンドとポジショニング
ファーストラインのディフェンスは、フリースローラインの延長線上に構え、オフェンスがフリースローライン付近に来るまでプレッシャーをかけにはいきません。もちろん、インバウンドのパスに対して、ディナイをすることもしません。これにより、オフェンスに時間をかけさせることができます。
フリースローライン付近までオフェンスが来たら、ファーストラインはガード(ボールマン)に対してプレッシャーをかけます。簡単にパスを回させてはプレスの意味がないので、手1本分程度の距離まで詰めるのが基本です。また、サイドラインに誘導するようにスタンスを構えます。
逆サイドのファーストラインはミドルラインにローテーションし、「2-2」の真ん中にパスが入らないようにします。ディナイをしてもよいし、適切な距離をとってスティールを狙ってもよいです。
ボールマンのディフェンスは、ミドルライン側にドライブをさせてしまうとトラップを仕掛けることができないので、サイドラインに誘導します。ただし、ミドルライン側にドライブされてしまった場合は、逆サイドのファーストラインがヘルプし、サイドよりにパスをさせるかドリブルで追い込むのが理想です。
セカンドラインとセーフティはそれぞれボールサイドに寄る(図参照)。逆サイドへのロングパスを警戒し、オフェンスの配置によって自分自身の立ち位置を微調整できるようにします。
・ボールをパッサー(エンドラインからパスをしたオフェンス)に戻されたら?
ボールをパッサーに戻された場合、すぐに元の2-2-1の形に戻ります。ファーストラインはフリースローラインの延長線上に構えられればベストですが、後退していても気にする必要はありません。
2-2-1ゾーンプレスの目的は相手に時間をかけさせてハーフコートオフェンスの時間を削ることですので、戻すパス(ボールを後ろに返すパス)に対しては歓迎してもよいくらいです。
・ファーストトラップ
オフェンスがサイドライン側へドライブを始めたら、ファーストラインとセカンドラインでトラップを仕掛けるチャンスです。ハーフラインの手前でダブルチームを仕掛け、ターンオーバーを誘います。
セカンドラインがスピードのついたドリブラーを止めることができずに突破されることがありますが、これは最もやられてはいけないケースです。ファーストラインがドリブラーのスピードと進行方向を制限することで、セカンドラインのヘルプがコースを絞って止められるようにします。
逆サイドのファーストラインはボールラインよりも下がり、コートの中央にパスが入るのを防ぎます。セーフティはボールがあるサイド側のスティールを狙い、逆サイドのセカンドラインはゴール下を守るセーフティの役割を果たします。
繰り返しの説明になりますが、ボールがボールラインよりも後ろに戻る分には全く問題ありません。戻った位置から再びサイドライン側へ誘導してトラップを仕掛けます。
・セカンドトラップ
2-2-1ゾーンプレスはファーストトラップを仕掛けて終わるチームがほとんどですが、選手に考える力があればセカンドトラップもうまくいくでしょう。
セカンドトラップを仕掛けるのは以下の2つのパターンが発生した時です。
- ファーストトラップを仕掛けた後、ドリブラーが同サイドの前線にパスをした場合
- オフェンスが前線のウィング付近にロングパスをした場合で、フロントコートに他のオフェンスがいない場合
ウィングへパスが出ると同時に、ダブルチームを仕掛けていたセカンドラインとセーフティで再びダブルチームを仕掛けます。ウィングでボールを受けるオフェンスは、ガードではなくセンターである可能性が高く、ダブルチームに落ちついて対処することができないので、ターンオーバーにつながることが多いです。
また、バックコートにオフェンスが2人以上残っているため、逆サイドがしっかりと戻っていれば数的有利になるので、ダブルチームを仕掛けることによってアウトナンバーができて失点してしまう可能性も低いです。
2-2-1ゾーンプレスの練習の手順
2-2-1ゾーンプレスを練習する際は、ファーストラインの分解練習から始めて、セカンドラインや全体の練習に入っていくのが基本的な流れになります。
ファーストラインの「横」のつながりと、ファーストラインとセカンドラインの「縦」のつながりは非常に大切ですので、それぞれを練習する必要があります。具体的な練習メニューは下記です。
- ファーストラインの2人の分解練習
- セカンドラインの2人の分解練習
- ファーストラインとセカンドラインの連携の分解練習
- 全体練習
– パッシングに対する移動の練習
– ツーガード、ワンガードに対する動きの練習
– ミドル側に抜かれた際の動きの練習(カバーリングとスイッチ)
– 2-2の真ん中にパスが入った際の動きの練習
– フラッシュに対するバンプの練習
– ファーストラインがミドル側を抜かれた際の動きの練習
– ファーストラインがサイドライン側を抜かれた際のプレスの練習
– 逆サイドのパスカットの練習
– 5対5で動きの確認
ハーフコートのディフェンスへの繋ぎ
2-2-1ゾーンプレスはハーフコートでディフェンスをすることが前提であるだけに、スムーズにハーフコートディフェンスに移ることが必須です。ベーシックなものとして、2-1-2か2-3ゾーンディフェンスが挙げられます。2-2-1ゾーンプレスの形をそのまま引き継げるので、移行はスムーズにできるでしょう。
また、奇をてらったものとしては、マンツーマンディフェンスがあります。マークマンをピックアップするのが非常に難しいですが、ゾーンプレスからマンツーマンディフェンスをされることに慣れているオフェンスはほぼないため、オフェンスを混乱させることができるでしょう。1試合を通して2-2-1ゾーンプレス→マンツーマンを行うことは現実的ではないので、試合中のポイントとなるタイミングで使うといいでしょう。
まとめ
2-2-1ゾーンプレスを試合で使うにあたっては、その目的を選手全員が理解しておくことが大切です。
積極的にプレッシャーをかけるディフェンスではなく、相手に時間を使わせることが目的であるということをしっかりと理解しましょう。
また、試合の流れに応じて「いつ」使うかというのも重要になってきます。試合の流れを読み、仕掛けるタイミングを逃さないようにしましょう。
マンツーマンディフェンス、2-2-1ゾーンプレス、2-3ゾーンディフェンスを組み合わせたチェンジングディフェンスを検討してみるのもいいでしょう。