バスケのオフェンスフォーメーションである『フレックスオフェンス』。
大学バスケをはじめ、中学や高校バスケ、ミニバスでも使える4アウト1インのモーションオフェンスの基本的な動きを始め、攻め方、使い所、チームとの相性などを詳しく解説しています。
Contents
フレックスカットとは?
フレックスオフェンスの説明を始める前に、フレックスカットについて説明します。
というのも、フレックスオフェンスはフレックスカットを元にしたオフェンスシステムですので、フレックスカットができなければ何も始まらないからです。
下の図に示した通り、フレックスカットとは、コーナーにいるオフェンスがスクリーンを使ってゴール下に切れ込むカッティングのことです。
通常は逆サイドにボールがあり、パスをもらってレイアップかゴール下のシュートを狙います。カッティングに際しては、ディフェンスの位置を見て、スクリーンの上か下のどちらを通るかを判断します。
フレックスオフェンスとは?
フレックスカットの動きがわかったところで、フレックスオフェンスの説明に入ります。
フレックスオフェンスとは、4アウト・1インを基本として、ダウンスクリーンとフレックスカットを中心に動きを作り、ノーマークのレイアップやゴール近くでのジャンプシュートを狙うモーションオフェンスです。オフェンスが動きを継続でき、攻めるポイントが複数あるのも特徴です。
大学バスケをはじめ、高校やプロでも使われているオフェンスシステムですが。動き自体はシンプルなのですが、スペーシング・カッティング・スクリーン・パス回しなどが複雑に絡み合うシステムなので、じつは高いバスケIQが要求されます。
また、フレックスオフェンスは主にマンツーマンに対するシステムなのですが、エントリーの仕方や動き方を少し変えることでゾーンディフェンスに対しても使うことができます。
フレックスオフェンスを導入すべきチームとは?
フレックスオフェンスはコートに出ている選手全員がオフェンスに参加するモーションオフェンスなので、選手のスキルアップやバスケIQの向上に役立ちます。
また、5人全員がアウトサイドの動き、パッシング/ドリブル/カッティング/スペーシング/アウトサイドシュートなどを行う必要があるので、長身で外の動きが苦手な選手の練習にもってこいです。
ただし、選手のレベルにばらつきがある場合にはやりにくいのも事実で、エースが1人で何十点も取るようなワンマンチームには向いていません。
5人全員のスキルレベルが同じくらいで、どのポシションでもこなせる5人がいるのが理想的ですが、仮に5人全員が揃っていなくても、選手のスキルアップを図るのがコーチの大切な役割だと思います。
少し話が脱線してしまいましたが、フレックスオフェンスを導入したほうが良いチームの特徴しては3つあります。
- 1on1に頼ってしまっていてオフェンスに動きがないチーム
- シュート力が高いチーム
- 身長がないチーム
オフェンスの動き方がわからずに、攻めるといえば1on1だけというチームも少なくないでしょう。モーションオフェンスはガチガチのシステマチックなオフェンスではなく、ある程度動きの型を決め、その中で選手が自由に応用させることができるものです。1on1に頼っていて動きがないチームは導入してみるといいでしょう。
フレックスオフェンスを使うとアウトサイドからのシュートが多くなります。しかも、インサイドからのキックアウトやフリーでのシュートの回数が増えるので、高確率のシュートが打てます。元からアウトサイド中心で攻めているチームには最適なモーションオフェンスです。
長身プレイヤーがおらず、ローポストやハイポストを起点として攻めることができないチームにとって、5人全員が流動的に動くフレックスオフェンスは効果的なオフェンスシステムです。
この3つの特徴に当てはまらないチームでも、フレックスオフェンスを導入することは十分に可能ですので、あなたのチームでも検討してみてください。
フレックスオフェンスのメリット/強み
次に、フレックスオフェンスのメリットを紹介します。
- 習得するのが簡単
- 選手全員が成長できる
- ドリブルの回数を減らしてパスの回数を増やせる
- オールラウンダーの育成
- 複数の攻めるポイント&ディフェンスの裏をつくプレイ
- ミスマッチを作れる
数多くのチームがフレックスオフェンスを導入しているのは、フレックスオフェンスが有効というだけでなく、簡単に習得できるという大きなメリットがあるからです。確かに、エントリーや得点に繋がるオプションが多いので完璧に学ぶのは大変ですが、基礎を身につけるのは簡単にできます。
フレックスオフェンスはチームオフェンスの代表格と言えます。しかも、ポジションに関係なく(ポイントガードやパワーフォワードに関係なく)、全選手が全てのポジションをやらなければいけません。これはデメリットのように聞こえますが、様々なポジションを行うことで、基礎技術を高めることができます。
特定の選手が毎回ボールを保持してドリブルで得点まで行くというのは、見ている人にとっても選手にとっても楽しいものではありません。多くのコーチがドリブルの回数を減らしたいと考えている一方で、具体的な減らし方がわからないと苦悩しているのではないでしょうか?その答えがフレックスオフェンスにあります。
オールラウンダーの育成は急務です。センターはペイントエリアの中だけで活躍すればいいという時代は終わりました。インサイドプレイヤーであってもガードのように動き、ドリブルやパスもできることを求められる時代になりました。選手1人1人の可能性を広げるためにも、フレックスオフェンスは役立ちます。
フレックスオフェンスはシンプルな動きから攻めることができるポイントがいくつもあります。さらに、何度も同じ動きを繰り返しているとディフェンスに先回りされて守られてしまいますが、先回りされた時は裏をついて得点に繋げることもできます。
ダウンスクリーンやカッティングを多くするフレックスオフェンスでは、ディフェンスのスイッチからミスマッチを作ることができます。インサイドのミスマッチだけでなく、ガードのミスマッチもできるので、外から1対1を仕掛けるのもいいでしょう。
フレックスオフェンスのデメリット/弱み
どんなオフェンスフォーメーションにも言えることですが、メリットがある一方でデメリットもあります。メリット・デメリットを天秤にかけ、チームとしてその戦術を採用するか決めましょう。
- ディフェンスに動きを予想される
- ターンオーバー
- 5人全員にシュート力が必要
フレックスオフェンスに限ったことではありませんが、モーションオフェンスはディフェンスに動きを予想されて先回りされてしまうというデメリットがあります。しかし、先回りされる=止められるということではありません。先回りされるのを前提に、先回りをされたら逆に動くなどの工夫をすることで十分に対応することができます。
パスの回数が多いため、その分ターンオーバーの回数も増えてしまいがちです。特にパスのレベルが低いチームでは、パスの回数が増えれば増えるほどミスに繋がるというのは明白なことです。また、カッティングに対してインサイドへパスをするのは、上手いチームでもミスをしやすいです。
5人全員がアウトサイドからシュートを決められるというチームは少ないでしょう。フレックスオフェンスでは5人全員がアウトサイドからシュートを打てる必要があるので、シュート練習を増やすなどの対策が必要です。
フレックスオフェンスの基本的な動き
まず初めに、フレックスオフェンスの継続的な動きを覚えます。この動きを元に、様々なエントリーやカッティング、ディフェンスの裏をかく応用プレイを練習していきます。
オフェンスはツーガード/両コーナー/ローポストの5箇所にポジションを取ります。
- 青1から青2へパスをする
- パスと同時に青5は青3へスクリーンをセットし、青3はフレックスカットをする
- 青1は青5へダウンスクリーンをセットし、青5は青1がいたトップポジションへ上がる
- 青1はコーナーへポップアウトし、青3がポストプレイヤーとなる
ここまでがフレックスオフェンスの半分で、ここからボールを逆サイドに展開することでフレックスオフェンスが一周します。
- 青2から青5へパスをする
- パスと同時に青3は青4へスクリーンをセットし、青4はフレックスカットをする
- 青2は青3へダウンスクリーンをセットし、青3は青2がいたトップポジションへ上がる
- 青2はコーナーへポップアウトし、青4がポストプレイヤーとなる
この基本的な動きの練習をする際は、6箇所(ツーガード/両コーナー/両ローポスト)にカラーコーンを置いておき、動く時の目標とするといいでしょう。
非常にシンプルな動きで、本当にディフェンスは引っかかるのだろうか?と疑問を持たれた方も多いのではないでしょうか。
この動きが有効な理由としては、フレックスカットに対してマークマンがついていくことが難しく(スクリーンがあるので)、スクリーナーのディフェンスがカバーをするかスイッチをしようとします。
その間にスクリーナーはダウンスクリーンを使ってトップポジションに上がろうとしているので、カバー(スイッチ)をするべきかマークマンについていくべきかという点で迷いが生じ、ディフェンスが遅れるからです。
また、フレックスカットに際しては、ディフェンスの位置に合わせてベースライン側(図で示しているカットとは逆)にカッティングしてもOKです。
フレックスオフェンスのエントリー
フレックスオフェンスをスタートするための入り方(エントリー)には様々なオプションがあります。エントリーを工夫することで、ディフェンスにフレックスオフェンスをしていると気付かせないというメリットもあります。
ここではエントリー方法を複数紹介しますが、全てを覚える必要はありません。チームで必要と思えるものだけ覚えるようにしてください。
・1-4ローセット
コーナーとローポストに4人がセットします。ポイントガードはボールを運んでくるときに右サイドが左サイドによります。逆サイドのローポストがガードポジションへ上がり、ポイントガードからパスを受けます。この状態でフレックスの形ができているので、基本の動きで説明したフレックスの動きに入ります。
・1-4ローセット – pattern2
上と同様に4人はコーナーとローポストにセットします。ポイントガードがボールを運んできたら、青3はウィングへ、青5はハイポストへ、青2はガードポジションへ上がります。青3はウィングでボールを受け、青1はUCLAカットをします。青3は青5へパスをして、青3がフレックスカットをします。
・1-4ハイセット
1-4ローセットと同様によく使われるのが1-4ハイセットです。1-4ハイセットから展開できるオフェンスのバリエーションが多いため、ディフェンスがフレックスオフェンスだと認識できる可能性は低いでしょう。
ポイントガード以外の4人はウィングとハイポストに一直線に並びます。ポイントガードがボールを運んできたら、ウィング(青2)がボールを受けます。ポイントガードはパスを出すと同時に、UCLAカットをします。スクリーンをした青5はガードへポップアウトし、青2からパスをもらいます。
この時点でフレックスオフェンスの形ができています。
・ボックス
少し複雑な動きになりますが、ディフェンスの対応を遅くできるすぐれたエントリーの方法です。
ポイントガード以外の4人が図のようにボックスを作ってスタートします。
ポイントガードがボールを運んできたら、ハイポストの1人(青5)がポップアウトしてパスを受けます。ポイントガードはパスをしたサイドのコーナーへ切れます。それと同時に、逆サイドのハイポスト(青4)はダウンスクリーンをセットし、青2はガードポジションへ上がります。スクリーンをセットした青4はすぐにコーナーへ切れます。
この時点でフレックスオフェンスの形ができています。
・エンドスローからのエントリー
フレックスオフェンスはエンドスローからエントリーすることもできます。攻めるのに時間がかかるため、24秒クロックの残り時間には注意を払いましょう。
インバウンダー(青1)以外はコーナーとローポストに一直線上に並びます。青1の合図と同時に、青4と5がバックランでガードポジションへ上がります。青1は青4へパスをして、青2へスクリーンをセットします。青2はスクリーンを利用してフレックスカットをします。
・ファイブアウト・モーションオフェンスからのエントリー
ファイブアウトの形からフレックスオフェンスのエントリーをすることもできます。詳しくは↓をご覧ください。
コーナーを利用したフレックスオフェンスの攻め方
フレックスオフェンスの基本的な動きでは、ガード間でのパスのみが行われ、空いたオフェンスを探すことになります。
しかし、大抵の場合はガード間でのパスをさせないようにディフェンスがディナイをしてくるでしょう。ガード間でパスができないとフレックスオフェンスは止まってしまいます。
そのような時のために、様々な攻め方(応用)を学び、試合に活かせるようにしましょう。
・バックカット&リプレイス
ガード間のパスをディナイされたら、バックカットを狙います。早いパス回しができていれば、ヘルプディフェンスがいない可能性が高く、バックカットからレイアップができます。
バックカットへパスが入らなかった場合、同じサイドのコーナーにいるプレイヤーがガードポジションをリプレイスします。バックカットをしたプレイヤーは同じサイドのコーナーへいきます。
・バックカット&ダブルスクリーン
フレックスオフェンスを継続させることはできなくなりますが、得点を取るために使えるオフェンスです。
先ほどと同様に、ディナイをされたらバックカットをし、コーナーにいるプレイヤーはガードポジションをリプレイスします。先ほどと違うのは、バックカットをしたプレイヤー(青2)は逆サイドへ切れていき、元からローポストにいるプレイヤーと一緒にダブルスクリーンをセットします。コーナーにいるプレイヤーがフレックスカットをします。
・UCLAカット
UCLAカットからフレックスオフェンスのエントリーをするのは簡単です。ポイントガードの青1からウィングの青3へパスをし、ハイポストのスクリーンを使って青1はローポストへ行きます。ハイポストでスクリーンをセットした青5はガードへポップアウトし、青3からパスをもらいます。
逆サイドではダウンスクリーンをしてポジションチェンジをしておくことで、ディナイをされずにスムーズにサイドチェンジができます。
・ドリブルエントリー
ディフェンスのディナイが厳しいときに使えるエントリーです。
青1はウィングへドリブルで行きます、青1の動きに合わせて、青3は図のように弧を描いてガードポジションへ上がります。その際青5のスクリーンを利用してディフェンスを振り切りましょう。
青1から青3へパスをすると同時に、青4はパスをもらえる準備をしておきます。この段階でフレックスオフェンスの形ができています。
・スタックスクリーン
スタックスクリーンからのエントリーは、フレックスオフェンスだけでなく、ワンサイドの3on3などへの応用性が高いです。
ボールを運んできた青1は右サイドによります(左でもOK)。スタックスクリーンを使って青3はコーナーへ、青2はガードへ上がります。青2へパスをしてフレックスオフェンスをスタートしてもいいですし、ここまでで紹介してUCLAカットやドリブルエントリーからフレックスオフェンスへつなげてもOKです。
また、スタックスクリーンを利用したオフェンスの展開方法は下の記事でまとめています。
ポストを利用したフレックスオフェンスの攻め方
通常はガード間でパスを回しますが、ローポストを使ったフレックスオフェンスも有効です。ローポストへパスを入れる際は、ガードから直接入れるのではなく、コーナー/ウィングからパスを入れるようにします。
また、ローポストへボールを入れる際はマッチアップを見極めるようにしましょう。フレックスオフェンスではミスマッチが発生している確率が高いので、自分たちのチームにとって有利なマッチアップになっているところでローポストにパスを入れましょう。
ローポストにボールが入ったら、最初に狙うのは1on1です。ミスマッチを生かして力強くゴール下を攻めましょう。また、1on1以外のオプションとしては以下の3通りがあります。
- 逆サイドからシンプルに飛び込む
- ボールサイドスクリーンからスリップイン
- トライアングルオフェンスを展開する
ローポストにボールが入ると同時に、逆サイドのウィングから飛び込むのは非常に有効なオフェンスモーションです。ディフェンスの意識がボールに行った瞬間に飛び込みましょう。
ポイントガードへスクリーンをセットしたプレイヤーがゴールに向かってスリップインをする動きです。ヘルプディフェンスがいないので、マッチアップのディフェンスの裏をかければ、大きな得点チャンスとなります。
フレックスオフェンスを止めて、トライアングルオフェンスを展開することができます。24秒ルールの関係上、時間をかけることができない可能性もあるので、トライアングルオフェンスに移行するかどうかは時間を見ながら判断する必要があります。
まとめ
フレックスオフェンスについて詳しく説明してきましたが、理解できたでしょうか?
フレックスオフェンスは効果的なモーションオフェンスで、高校や大学バスケだけでなく、ミニバスなどの幼少期にも使えるオフェンスシステムです。
チーム全員でオフェンスに参加し、バスケを楽しく上達させましょう♪(^^♪