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ボックスワンとは?
ボックスワンとは、5人のディフェンスのうち1人はマンツーマンディフェンスを、残りの4人はゾーンディフェンスを行うディフェンスシステムのことです。
相手チームに得点の大きな割合を占めるエースや、試合の流れをコントロールするエースポイントガードが1人いる場合に有効なディフェンスシステムです。
マンツーマンとゾーンディフェンスを組み合わせたディフェンスで、相手チームの中心となる選手を抑えることで、フラストレーションを溜めさせて相手チームのリズムを崩します。またボックスワンはオフェンスが対戦慣れしていないことが多く、オフェンスを混乱させる効果もあります。
守りたい相手のエースプレイヤーがインサイドプレイヤーの場合、2-1-2ゾーンディフェンスか2-3ゾーンディフェンスで対応するのが一般的です。ただし、インサイドを中心にアウトサイドも積極的に狙ってくるプレイヤーの場合、ボックス&ワンで抑えることになります。
勝ち進んでいけば、1on1では止めることのできないエースプレイヤーを擁する相手と当たることもありますので、練習しておいて損はないでしょう。
*説明を分かりやすくするために、マンツーマンでディフェンスをする1人のことを「チェイサー」と呼ぶことにします。(正式名称ではありません)
ボックスワンのメリット/強み
- エース選手の得点を抑えることができる
- エース選手をイラつかせ、疲れさせることができる
- 相手チームを混乱させ、リズムを狂わせることができる
- 簡単に習得することができる
ボックスワンを正しく機能させることができれば、毎試合20~30点以上も取るエース選手の得点を抑えることができます。ボールを持たせないためのディナイ、ボールを持たれた後は5人全員で守るというボックスワンの強みを活かせます。
チェイサーがきちんと役割を果たせば、相手のエース選手はチェイサーを振り切ってボールをもらうためにかなりの運動量を必要とします。さらに、激しいディナイに加えて、ボールを持った時点で他のディフェンスもヘルプの準備をしていることがわかるので、体力だけでなく精神面でもストレスがかかります。
ボックスワンを使うチームはほとんどありませんので、使われた時に混乱してしまうのは想像に難くないでしょう。エース選手のリズムが崩れるだけでなく、チーム全体のリズムを崩すことができます。
ゾーンディフェンスの中で最も簡単なのがボックスワンです。ボックスを作る4人の役割ははっきりとしていますから、選手がボックスワンを理解して実践するまでに練習の時間があまり必要ありません。
ボックスワンのデメリット/弱み
- 4人のゾーンの真ん中が非常に弱い
- シュートが上手な相手には通じない
- エース選手がビッグメンの場合には使えない
ハイポストをはじめ、4人のゾーンの真ん中にパスを入れられてしまうと守りにくいです。また、ドライブに対しても誰がヘルプにいくのかが曖昧になってしまい、中央を突破されてしまうことがあります。コミュニケーションをとってパスを入れさせない、ヘルプディフェンスをはっきりとさせることが大切です。
ボックスワンはアウトサイドのシュートに対するチェックがどうしても遅くなってしまうので、ノーマークでシュートを打たれてしまう可能性が高くなります。アウトサイドを中心に攻めるチームに対しては効果を発揮しないでしょう。
マークをしたい相手選手がインサイドを中心とする場合、ボックスワンを使うことはできません。その代わり、2-1-2や2-3ゾーンディフェンスで対応するのがいいです。
ルール
- エースプレイヤーには必ずディナイをする
- エースプレイヤーにボールが渡ったら全員で守る
- 5人全員でリバウンド参加!3人でポジションを確保する
- エースプレイヤーがインサイドでボールを持ったら迷わずダブルチーム!
ボックスワンの大前提として、相手のエース選手にはボールを持たせないようにディナイをします。通常の2線のディナイだけでなく、ボールのポジションに関係なくフルディナイをします。ディナイをしていてもボールを持たれてしまうことが当然ありますが、厳しいディナイをしておくことでその後攻められにくくなるというメリットがあります。
相手エースがボールを持ったら、残りの4人全員がヘルプできるように準備をします。1線のディフェンスはアウトサイドからシュートを打たれないようにプレッシャーをかけ、残りの4人はドライブに対して早めのヘルプをできるようにします。
ディフェンスリバウンドはゾーンディフェンスにおける最大の課題です。ボックスを作っている4人で最低でも3ヶ所のリバウンドポジションを確保しましょう。
相手エースにインサイド(ハイポストやローポスト)でボールを持たせないようにフロントディナイをするのが基本ですが、万が一ボールを持たれてしまった場合は、即座にダブルチームを仕掛けてボールを離させるようにします。
また、相手エースがインサイドを中心に攻める選手の場合は、ボックスワンよりも2-3ゾーンディフェンスヤ2-1-2ゾーンディフェンスヲ検討してください。
各プレイヤーのポジショニングと役割

チェイサー
チェイサーはエース選手にマンツーマンでマッチアップすることが役割です。エース選手にボールを持たせないように常にディナイをして、エース選手を疲弊させるとともにフラストレーションを溜めさせることができれば成功です。
チェイサーは高いディフェンス能力だけでなく、忍耐強さや体力も必要になります。1試合を通して同じ選手が担当するのではなく、ベンチプレイヤーと交代をしながらボックスワンを実行してもいいでしょう。
また、チェイサーはヘルプディフェンスやローテーションを考える必要はありません。エース選手以外の得点は責任の範囲外と割り切る心構えも大切です。
チェイサーにとって最大の負担となるのは、オフボールスクリーンです。相手チームはエース選手にボールを持たせるためにオフボールのスクリーンを数多く仕掛けてくることが多いですが、スクリーンに対しては基本的にファイトオーバーをします。状況によっては近くの味方とスイッチをしてもいいでしょう。
ボックスの下側
ボックスの下側のディフェンスは、ローポストからコーナーにかけてのディフェンスを担当します。また、逆サイドにボールがある時は、いつでもヘルプディフェンスができるように構えておきます。また、自分が担当するサイドのローポストでは必ずフロントポジションを取り、ローポストにボールが入らないようにします。
コーナーからゴール下までと、守備範囲が広いので俊敏性が必要になります。背が高くて俊敏性に欠ける選手がいる場合は、ボックスワンよりもダイヤモンドワンを使うといいでしょう。
ボックスの上側
ボックスの上側のディフェンスは、アウトサイド(プリミーター)のシュートチェックとハイポストへパスが入ることを防ぐのが役割です。相手オフェンスのポジショニングに合わせて、2人の位置関係を調整するようにします。
遠い距離からクローズアウトをすることが多いので、足が速くてクローズアウトからの対応力に優れた選手が向いています。また、リバウンドには必ず参加しましょう。
ボールポジション(シチュエーション)別の守り方
エース選手がボールを持っている時の守り方
チェイサーは可能な限りボールにプレッシャーをかけます。後ろに手厚いヘルプディフェンスがいるので、外から簡単に打たれてしまうよりもドライブさせるように仕向けます。
残りの4人は元のボックスの形に戻ることを意識し、ボールを中心に守ることでどこにドライブされても素早いヘルプができるようにします。ボックスの形に戻ることでインサイドの収縮するので、他のオフェンスがアウトサイドでノーマークになってしまいますが、他のオフェンスにノーマークでアウトサイドシュートを打たれることは諦めます。

トップにボールがある時の守り方
ボールマンがシューターの場合を除いて、ボールマンに対してチェックはせず、ボックスの形を保ちます。トップにボールがある時の各プレイヤーの動きは以下の通りです。
青1:相手エースへディナイをします
青2と青3:ハイポストへパスが入るのを防ぎ、スリーポイントの外でパスを回されることは気にしません。
青4と青5:ペイントエリアの境目を目安として構えます。エース選手がいる方のサイドはバックドアカットを警戒します。
シューターがボールを持っている場合は、4人で1-1-2のゾーンの形になって守ります。

ウィングにボールがある時の守り方
ウィングへパスが行った時の各プレイヤーの動きは以下の通りになります。
青1:相手エースへディナイをします
青3:ボールにクローズアウトをしてボールマンのディフェンスをします。
青2:すぐさまハイポストへスライドし、ハイポストを下側から守ります。身長差があってディナイの意味がない場合は、パスが入った後にゴールに向かせないようにします。
青5:ローポストのフロントポジションを取ります。ローポストがいない場合、ブロックからショートコーナーの付近に位置します。ローポストのフロントポジションを取る理由は、コーナーにオフェンスがいてパスが行った場合に、クローズアウトをしなければならないからです。
青4:ヘルプディフェンスに行ける位置にいきます。

コーナーにボールがある時の守り方
コーナーへパスが行った時の各プレイヤーの動きは以下の通りになります。
青1:相手エースへディナイをします
青2:ハイポストから1、2歩下がった位置にポジションを取り、ボックスの真ん中に飛び込むオフェンスをバンプします。また、逆サイドへのスキップパスもケアします。
青3:同サイドのウィングにディナイをするのか、下がってボールに対するディフェンスの厚みを出すのかは状況次第です。コーナーでボールを持っているオフェンスがドライブを得意とするのであれば、下がってヘルプの準備をします。逆に、ボールハンドリングに長けていない
青4 :ボールサイドのローポストを守ります。自分より後ろに味方がいないので、フロントポジションを取ってはいけません。
青5:コーナーへボールが落ちると同時にクローズアウトをします。絶対に守る約束として、ベースライン側にドライブをさせてはいけません。

ハイポストにボールがある時の守り方
ハイポストにボールが入ってしまったときは、上側のディフェンス2人でダブルチームをします。パスの出所によってディフェンスの位置が変わりますが、1人はゴールラインを守ります。
また、青4と5はハイローをさせないようにローポストからゴール下付近のポジション争いに負けないようにしましょう。
「ダブルチームを仕掛けるとアウトサイドが空いてしまうのでは?」という疑問がありますが、ボックスワンをすると決めた時点である程度のアウトサイドシュートは捨てています。というよりも、ボックスワンができる相手オフェンスはアウトサイドシュートが苦手なはずなので、インサイドを攻められるのをダブルチームで防いでアウトサイドシュートを打たせます。

ローポストにボールがある時の守り方
ローポストに対してはフロントディナイをしているので基本的にパスが入ることはありませんが、ポジションを取られてパスが入ってしまった場合は1対1で守ります。1対1では明らかに守れないマッチアップの場合は、ボールサイドの上側のディフェンスがダブルチームを仕掛けます。
ローポストにボールが入ってしまった場合はかなり不利な状態ですので、ダブルチームを仕掛けるにしても失点する可能性が高いことを覚悟しましょう。
オフボールスクリーンの守り方
ボックスワンを仕掛けると、オフェンス側はエース選手に対してオフボールスクリーンをしてボールを持たせようとするはずです。ボックスワンを試合で使う上では、オフボールスクリーンの対策/練習をしておくことは必須です。
オフボールスクリーンに対する基本的な考え方として
- チェイサー
- チェイサー以外
全てのスクリーンに対してファイトオーバーをするつもりで守る。
声を出してチェイサーにスクリーンの存在を知らせる。
スイッチが可能ならスイッチをしてチェイサーの役をかわる。
身長差や俊敏性の問題からスイッチが難しい場合は、オンボールスクリーンのヘッジのように飛び出してバンプをして、相手のエース選手を遠回りさせる。その間にチェイサーが追いつく。
スクリーンに対する反応が遅れて上の2つのどちらもできない場合は、チェイサーと一緒に相手のエース選手を追いかけてそのままダブルチームを仕掛ける。スクリーンによってチェイサーが遅れているので、そのまま1on1の状況を作るのは非常に危険です。
オフボールスクリーンではありませんが、オンボールスクリーンの守り方からオフボールスクリーンの守り方を考えることもできます。スクリーンの守り方に関しては下記を参考にしてください。
カッティングの守り方
エース選手のカッティングは全てバンプします。チェイサーだけでなく、ボックスを作っている4人も積極的にバンプをして、エース選手を疲弊させてストレスを溜めさせます。
他のオフェンスがカッティングするのに対しては、追いかける必要もバンプをする必要もありません。ボックスの形を保ってエリアを守ります。これは、インサイドにディフェンスがいるので、カッティングからレイアップが生まれることは基本的にないからです。もちろん、オフェンスのパッシングによってゴール下が空いてしまっている場合などはこの通りではありません。
スキップパスの守り方
2-3ゾーンディフェンス、3-2ゾーンディフェンス、1-3-1ゾーンディフェンスなどと異なり、ボックスワンのスキップパスへの対応は非常にシンプルです。スキップパスの飛び先に一番近いディフェンスがクローズアウトをします。他のディフェンスは、ボールポジション別の守り方の所で説明した通りにポジショニングをします。
ボックスワンはスキップパスからスリーポイントシュートを防ぐことが非常に難しいディフェンスシステムです。ボックスワンをする以上、ある程度スリーポイントシュートを打たれることは諦めましょう。逆に、無理にクローズアウトをして簡単に抜かれてしまうことを避けましょう。
ダイヤモンドワンへの応用
ボックスワンの応用系と言えるのがダイヤモンドワンです。
基本的な考え方はボックスワンと同じですが、ボックスの代わりに4人でダイヤモンドの形のゾーンディフェンスをします。3人がアウトサイドのディフェンスをすることから、ボックスよりもアウトサイドのディフェンスに強いです。一方で、インサイドは2人から1人になるので脆くなります。特にショートコーナー付近を守るのが難しくなります。
インサイドを守るディフェンスの能力が優れていて、かつ相手オフェンスのインサイドが弱い場合にはボックスワンよりもダイヤモンドワンが優れています。
まとめ
ボックスワンは毎試合使うようなディフェンスシステムではありませんが、エースプレイヤーに頼っている相手チームに対して絶大な効果を発揮します。相手オフェンスを混乱させ、1on1では止めることの難しい選手の得点を半減することができるでしょう。
しかも、ボックスワンは毎日練習しなければならないようなものではなく、数時間の練習で十分に試合で使えるレベルのディフェンスになるという特徴があります。大会直前に練習してもいいでしょう。
以上でボックスワンの説明を終わりますが、感想やご意見がありましたら、コメント欄にお寄せください。