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3-2ゾーンディフェンスとは?
3-2ゾーンディフェンスとは、2-3や2-1-2ゾーンディフェンスなどと並ぶ日本で一般的なゾーンディフェンスの1つです。
2-3(2-1-2)ゾーンディフェンスがインサイドを重点的に守るスタイルであるのに対して、3-2ゾーンディフェンスはアウトサイドに特化して守るスタイルです。アウトサイドからのシュートが多く、得点の大半をスリーポイントなどに頼っているチームに対して有効なゾーンディフェンスになります。
5人全員がアウトサイドのエリアを担っているので、スリーポイントに対してはクローズアウトが素早くできます。一方で、インサイドやドリブルペネトレイトに対して弱いという弱点もあります。
メリットやデメリット、選手に求められる能力や3-2ゾーンディフェンスに固有のルールを踏まえた上で、自分たちのチームに合うかどうかを検討して導入して頂ければと思います。
ちなみに、アメリカでは3-2ゾーンディフェンスとは言わず、1-2-2ゾーンディフェンスと言うことの方が多いです。中身は基本的に同じなので(少し違いはありますが)、3-2ゾーンディフェンスとして説明していきます。
3-2ゾーンディフェンスのメリット/強み
- アウトサイド(ペリメーター)に強い
- チェンジングディフェンスに向いている
- 3線速攻に繋げやすい
- 5アウトのオフェンスを主体とするチームに強い
トップと両ウィングの合計3人がアウトサイドを守っているので、外からのシュートに対して守りやすいです。
相手オフェンスのリズムを崩すためのチェンジングディフェンスは現代バスケの主流になっています。NBAやBリーグでも要所要所でゾーンディフェンスを活用しているチームは少なくないです。
チェンジングディフェンスをする上では、簡単なゾーンディフェンスの方が好ましいです。なぜなら、主軸として使わないゾーンディフェンスに多くの時間を割くのは無駄だからです。そして、もちろん一朝一夕で完璧にできるほど簡単ではありませんが、3-2ゾーンディフェンスは他のゾーンディフェンスよりも習得が簡単という特徴があります。
トップと両ウィングにいることで、相手のミスやディフェンスリバウンドから速攻に繋げやすいことは大きな強みです。
ちなみに、私はポイントガードをトップにするよりも、ウィングにした方が良いと考えています。リバウンドからのアウトレットパスやターンオーバーからの速攻を出す際には、中央にいるとパスがもらいにくいからです。
5アウトを主体とするチームの場合、オフェンスは「1-2-2」の陣形をとることが一般的です。3-2ゾーンディフェンスはこの「1-2-2」の形にそのまま対応した形なので、マッチアップがしやすく守りやすいという特徴があります。
3-2ゾーンディフェンスのデメリット/弱み
- ハイポストが守りにくい
- ディフェンスリバウンドに弱い
- センターがコーナーを守らなければいけない
3-2ゾーンディフェンスはゾーンの真ん中に穴が空いている状態なので、ハイポストにパスが入ると守るのが至難になります。ほとんどのゾーンオフェンスの基本はハイポストを起点にオフェンスを展開することなので、いかにハイポストを守るかということが課題になります。
ゾーンはマンツーマンと比べてそもそもリバウンドに弱いですが、インサイドに2人しかいない3-2ゾーンディフェンスは極めてリバウンドに弱いです。
5人の中に長身で速い動きに対応ができない選手がいる場合、3-2ゾーンをするべきではありません。なぜなら、下2人の守備範囲はコーナーを含み、5人全員がアウトサイドへのクローズアウトからドライブへの対応をしなければならないからです。
ルール:基本事項の確認
ゾーンディフェンス全般に共通するルールが多いですが、3-2ゾーンにおいても守るべきルールなので、練習中や試合を通して常に頭に入れておきましょう。
- ハンズアップ
- 5人全員でリバウンドに飛び込む
- オフェンスの視線を読む
- バンプをする
全てのゾーンディフェンスに共通する基本的なルールの「ハンズアップ」。オフェンスに自由にパスを回させないために、またゾーン自体を大きく見せて攻めにくくさせるために全員ハンズアップをします。
3-2ゾーンディフェンスの弱みであるリバウンドを補うために、5人全員でリバウンドに参加します。特に上の3人は飛び込みリバウンドを意識的に行います。
やみくもにディフェンスを頑張っても3-2ゾーンは成功しません。オフェンスの視線を読み、次の動きを予想します。もちろん最初から上手くできることはありませんが、経験を積むごとに相手の動きを読めるようになっていきます。
ハイポストフラッシュやカッティングをする選手に対しては、必ずバンプをしてから味方に引き渡します。バンプができなかった場合でも、声を出して味方に引き継ぐようにします。
5人のポシション別の役割を理解する
説明の便宜上、各ポジションのことを「トップ、ウィング、ポスト」と呼ぶことにします。説明中では、「ウィング(青2)」などのように図中の番号と一致するようにしていますので参考にしてください。
・トップ
トップは3-2ゾーンの中で最も重要なポジションです。高いバスケIQと運動能力の両方が要求され、ハイポストを守るという点からある程度の身長も必要です。
トップが守備を担当するエリアは図の通りで、果たすべき役割は主に3つあります。
- トップ・オブ・ザ・キー周辺の1on1
- ハイポストのケア
- コミュニケーションの柱
1on1でドリブル突破されてしまうと、ゾーンの形上ヘルプが間に合わずに失点につながります。トップの選手は1on1で抜かれてはいけないという高いレベルが求められます。
ボールが他のエリアにある時は、主にハイポストの守備を担当します。ハイポストにボールを入れさせないように守ることが求めれます。
ボールのある場所に関わらず、常にゾーンの中心にいるのでコミュニケーションの中心となります。
・ウィング
ウィングはトップポジションにボールがある時のハイポスト/エルボーのディフェンスと、ウィングポジションにボールがある時のボールチェックを行います。
また、同じサイドのコーナーにボールがある時に、ウィングポジションにいるオフェンスをディナイするのか、ヘルプディフェンスのために引いておくのかはチームごとの決まりを作ります。
速攻に繋げるという目的から、ウィングはポイントガードとシューティングガードが担当するのがいいでしょう。
・ポスト
ポストはペイントエリア内、ローポスト、コーナーのディフェンスを担当します。
ハイポストにボールが入ってしまった場合のマッチアップもしなければならず、守備範囲が広いです。高い機動力とともに、オフェンスの位置に合わせて自分のポジショニングを変えていく柔軟性が大切になります。
ボールポジション(シチュエーション)別の守り方
・トップ・オブ・ザ・キーにボールがある時
トップ(青1)がボールマンをマッチアップしますが、スリーポイントラインから離れている場合に過度にプレッシャーをかけに行ってはいけません。トップ→ウィング→ハイポストというパスの流れは避けたいので、トップがスリーポイントラインから離れるのは危険だからです。
ウィングは2人でハイポストへのパスをケアしてもいいですし、ハイポストのオフェンスのいる位置によっては1人(青2)がハイポストのケア、もう1人(青3)はアウトサイドに張るようなディフェンスにしてもいいでしょう。(図参考)
・ウィングにボールがある時
ウィング(青2)はボールマンに対して強いプレッシャーをかけます。オフェンスがウィングから自由に攻めることができては、3-2ゾーンディフェンスが全く機能しなくなります。
その他の選手のポジショニングは
- トップ(青1)はハイポストにパスが入らないように守ります。外もケアしなければならないので、オフェンスに対して上側から付きます。
- 逆サイドのウィング(青3)はスキップパスに備えます。
- ポスト(青4、青5)はすぐにヘルプディフェンスにいけるようにポジショニングを取りましょう。また、オフェンスの位置によって柔軟にポジショニングを変えることが大切です。
・コーナーにボールがある時
コーナーへのパスと同時にポスト(青4)はクローズアウトをします。ウィークサイドを抜かれるとヘルプディフェンスが間に合わないので、ウィークサイド側を防ぐようにクローズアウトをします。
コーナーでボールを持ったオフェンスのアウトサイドシュートが苦手であれば、無理にクローズアウトをする必要はありません。
その他の選手の動きは
- ポスト(青5)はボールサイドに移動し、ヘルプ&ローポストを守ります。
- ウィング(青3)はペイントエリア内に入り、インサイドの守りを固めます。もちろんスキップパスに対しても対応できるようにしておきます。
- トップ(青1)はハイポストを下側から守ります。
・ハイポスト
ハイポストにボールが入ると非常に守りにくいです。まずはハイポストにパスを入れさせないように守りましょう。
ハイポストにパスが入ってしまった場合は、基本的にはトップが守ります。トップが上側から守っていて守れない場合は、ローポストにオフェンスがいないサイドのポスト(青4)が守ります。
・ローポスト/ショートコーナー
ローポストに対してはポスト(青4と青5)はフロントディナイをしてパスを入れさせないようにします。
フロントポジションが取れずにパスが入ってしまった場合は、慌てずに1対1で守りましょう。
ローポストからは飛び込んでくるオフェンスへのパスに注意が必要です。回りのディフェンスがバンプをします。
スキップパス
5人全員がアウトサイドのエリアを担当しているので、スキップパスに対しては比較的守りやすいです。
・ウィングからコーナーへのスキップパス
ウィングからコーナーへのスキップパスは頻繁に起こります。
コーナーへ最も近い逆サイドのウィング(青2)がシュートを打たせないようにクローズアウトをします。ただし、コーナーへマッチアップをしてウィングをノーマークにしてしまっては意味がないので、時間を稼いだらウィングへ行きます。
青2はコーナーへ行く振りをしてウィングへ行くわけですが、どの程度コーナーへ近づけばいいかということに正解はありません。重要なのは、オフェンスに気持ち良くシュートを打たせないように戸惑わせるということです。
逆サイドのポスト(青4)はダッシュしてコーナーへクローズアウトをします。
・コーナーからウィングへのスキップパス
コーナーから逆サイドのウィングへのスキップパスは滞空時間が長いので、スティールを狙うことができます。スキップパスが通った場合でも、3-2ゾーンディフェンスの陣形が崩れていることはありませんので、そのまま継続してディフェンスしていきます。
・トップからコーナーへのスキップパス
ポスト(青4と5)がコーナーへクローズアウトをします。スムーズにコーナーへ行けるように、ローポストにいるオフェンスの上側にいることが大切です。
また、オフェンスはスクリーンをセットしてコーナーでシュートを打つセットオフェンスを展開してくる可能性が高いですが、同じサイドのウィングと連携を取ってコーナーへのチェックができるようにします。
オーバーロードオフェンスの守り方
ゾーンディフェンスに対してオーバーロードオフェンスを展開するのは定石中の定石です。ディフェンスとしてはしっかりと対策を立てておくことが大切です。
ウィング/コーナー/ローポストの3箇所でトライアングルオフェンスの形を作り、逆サイドからハイポストフラッシュをすることでオーバーロードオフェンスの形を作ることが多いです。
これに対してディフェンスは、図のようにゾーン全体で守ります。
この際のローポストに対しては無理にフロントポジションを取る必要はありません。なぜなら、ヘルプディフェンスがいなので、裏へのパスが守れないからです。また、トップはハイポストを下側からディフェンスします。これはローポストにボールが入った時にハイポストからゴールに向かって飛び込まれるのを防ぐためです。
3-2ゾーンディフェンスの応用形
トップ(青1)が図のように最初からハイポストを守るという方法があります。
このディフェンスのメリットは、ハイポストにパスを入れられる可能性がグンと低くなることと、ウィングのディフェンスがアウトサイドに張っておくことができるので強いプレッシャーをかけられるということです。
相手のポイントガードにスリーポイントシュートがない場合にできます。シューターがポイントガードのポジションにローテーションしてきた場合は、通常の3-2ゾーンの形に戻すことで対応します。
まとめ
3-2ゾーンディフェンスはアウトサイドを効果的に守れる一方で、ドライブペネトレイトやインサイドに弱いという弱点があります。
相手チームの特徴を踏まえた上で、試合の状況を見極めて使うことが大切です。
個人的な意見ですが、3-2ゾーンディフェンスは1試合を通して使えるゾーンディフェンスではなく、試合の状況に応じてピンポイントで使うゾーンディフェンスだと思います。チェンジングディフェンスの1つの守り方として使えば効果の高いゾーンディフェンスになるでしょう。
ここまでかなり長い説明になってしまいましたが、3-2ゾーンディフェンスを理解していただけたでしょうか?
今回はディフェンス面を取り上げましたが、3-2ゾーンディフェンスを攻略したいという人は以下を参考にしてくださいね。